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R&Dエンジニア

野田 誠人 Masato Noda

大阪大学理学部数学科中退。SES企業に入社し、C#を中心としたシステム開発を手がける。その後、かつてバンドに参加していた縁からEYS-STYLEに転職し、ほぼ唯一のエンジニアとして基幹システムを構築。結婚を機に京都へ生活圏を移し、フリーランスを経て塾・教育業界向けシステムを受託開発する企業に転職。講座や出欠管理から動画配信、LINE連携までさまざまなサービスを開発した。2019年4月、Inspiart事業に参加すべく再びEYSに入社。

エンジニアであり、バンドメンバー。
だから見える
楽譜のブラウザ表示が抱える課題と
目指すべき理想

EYS-STYLE(以下、EYS)設立のベースとなったバンドメンバーの一人、野田 誠人氏。エンジニアでもある彼は、その縁から初期のEYSに入社し、基幹システムを一人で構築した。そして一度はEYSを離れた野田氏が再びEYSに参加し、Inspiart事業に携わることに。今回手がけるのは「楽譜の表示」。音楽や演奏、すべてのベースとなる楽譜は、知見がなければ理想に近づけない。エンジニアでありバンドメンバーである野田氏だからこそ、できることがある。

Noda Masato

演奏にあわせてスクロールする楽譜

野田氏がInspiart事業で目指す「楽譜の表示」とはどういったものなのだろうか。「まずは基本ですが、きれいに表示させることからスタートです」と話す。特に楽譜を見ながら演奏するときに問題になるのが“譜めくり”。「紙でもそうですが、ページの最後まで演奏して楽譜をめくると、ページが切り替わるときには次のフレーズが分かりません。演奏中は次にどんなフレーズがくるかを把握しながら演奏するので、これでは困る。演奏にあわせて楽譜が横にスクロールしていくような形が理想だと考えています」現在もPCやタブレットに楽譜を表示させる仕組みはあるが、演奏している箇所を示したカーソルを動かす処理がスムーズにいかないという。「バンドなど全楽器の楽譜から、いくつかパートを選んで表示させるようなサービスもありますが、理想形ではありません。まずはこういった表示の問題から取り組むところですね」

Noda Masato

レンダリング処理に課題

そこで現在、活用しようとしているのが楽譜表示のライブラリ「OpenSheetMusicDisplay」である。今回のプロジェクトでは、マルチプラットフォームで使えるものを目指すために、まずはWebブラウザでの表示を目指している。野田氏は「違う言語で開発したものをJavaScriptに変換しているのではなく、OpenSheetMusicDisplayは最初からブラウザ表示のために開発されている点も魅力でした」と話す。また、ライブラリによってはスラーなどの記号が表示されないものもあったが、こういった基本的な問題をクリアしていた点も評価している。 しかし、カーソル動作をはじめ課題は多い。「OpenSheetMusicDisplayでは最初にすべてのデータを作ってからブラウザでレンダリングしているので、データ量が大きい曲だと負荷が大きく、きれいに動きません。今は一部分だけ変換処理をおこない、順次表示する方法がないか探っている最中です」さらに画面で解像度を変換したときにも表示を柔軟に変えられなければならない。現状では再計算を行って改めて表示しているが、実用に耐えうるのか検証が必要だという。「ほかのライブラリを検討した結果、現状はOpenSheetMusicDisplayが有力候補ですが、今後自分たちでライブラリを作る可能性もあると思います」楽譜表示ライブラリをイチから開発するのは一筋縄ではいかない。しかし、理想を実現するためにはそれをも厭わない、そんな姿勢が垣間見える。

Noda Masato

「見やすい楽譜」を模索する

もうひとつ大きな問題となるのが、楽譜がプロポーショナル(可変幅)であることだ。「16分音符4つと4分音符1つは演奏すると同じ長さですが、楽譜上では同じ幅では書かれていません。演奏にあわせてカーソルを動かすとなると、小節ごとに幅が違い、カーソルのスピードがコロコロ変わってしまう。それが見やすいかと言うと疑問ですよね。これを解消するには同じ幅で表示させる必要があります」と野田氏は語る。一方で、従来の楽譜に慣れている人にとっては等幅で表示された楽譜は見づらいものになるのではないか。「音楽の経験値によっても、どの状態が見やすいかは変わるでしょう。重要なのは見やすい楽譜であり、カーソルの動きが不自然にならないこと。何よりも、それを見ながら練習や演奏ができなければ意味がありません」ひとつの表示方法に統一するのが正解なのか、異なるモードを作って切り替える形とするのか、こちらも検討を進めていくという。

Noda Masato

きっかけは、バンド

こういった楽譜表示の課題を見極め、解決に向けて開発を進めるために、音楽、そして楽譜の知見が求められるのは当然だろう。エンジニアであり、音楽の知見もある野田氏は、まさにうってつけの人物だったのだ。EYSとの出会いについて野田氏は「大学時代の友人が社長の吉岡と知り合いでした。私は高校時代に吹奏楽部だったことから、吉岡にバンドを一緒にやろうと誘われたのがきっかけですね」と話す。その後、EYSが設立。事業を拡大するなかでシステム整備が必要になり、野田氏に声がかかった。「当時、働いていた会社では将来的にマネジメントに進むことを求められており、エンジニアリングを突き詰めるキャリアの選択肢がありませんでした。マネジメントには興味を持てず、今後をどうしようか悩んでいた時期でもあり、EYSの仕事も面白そうだと転職を決めました。その頃のEYSはすべてExcelで管理していて、システムらしいシステムはまったくないところからのスタートでした」と振り返る。そして、レッスン管理やレッスン予約のWebアプリケーションの開発を進めることとなった。「個人的に面白い技術だと注目していたRuby on Railsを採用しました。今ほどは普及していなかったのですが、ちょうどRuby on Rails 3.0がリリースされ、これなら使えると思ったんです」こうして野田氏が開発したサービスは、西新宿のEYS第一号スタジオオープンにあわせリリースされた。

Noda Masato

「もう一度、君をスカウトしたい」

その後、EYSを離れ、結婚を機に出身地である京都に住まいを移した野田氏。フリーランスのエンジニアを経て、塾・教育業界向けのシステムを受託開発する企業に転職し、エンジニアとしてのキャリアを積む。その間、ひとりの友人として吉岡社長と付き合いが続いていたが、Inspiart事業でブロックチェーン、AIとともに重要なポジションを担う楽譜の表示を進める人材として野田氏に声がかかることとなった。「その前から1年ほど基幹システムの改修などを副業として手伝っていたのですが、Inspiart事業が本格化し、『もう一度スカウトしたい』と言われました」
このころ、受託開発の仕組みに限界を感じていた野田氏は転職活動をしていたのだが、京都を離れるつもりはなく、EYSからの誘いは何度か断っていたのだという。しかし、今ならばリモートでも問題なく仕事ができる、東京に引っ越す必要はないと説得された。「受託開発ではお客様がお金を出さなければ何もできません。自分でサービスを育てていける環境は、今までなかったので興味はありました」前回EYSに参加したときは社内向けシステムがメインであり、サービスを発展させるまでに至らなかったが、今ならば自分が作ったものをよりよくするサイクルを実現できるのではないか。「残りの人生でなにかにコミットするなら、面白い分野だと思いました。いざ戻ってきたら、優秀なエンジニアが何人もいて驚きましたね」野田氏はそう楽しそうに話す。

Noda Masato

音楽を知っているからこそのアイデア

楽譜も表示して終わりではなく、機械学習との連携も視野に入れている。たとえば、フェルマータ(伸ばす)、リタルダンド(テンポを次第に落とす)などの記号があっても、機械にはどの程度音を伸ばすのかなどを判断できない。「もちろん指揮者の好みはありますが、曲によって傾向はあります。傾向があるならば機械学習で分析し、楽譜をもとに音源を生成するときに活かせるはずです」もうひとつはジャズのアドリブだ。「アドリブはかなり訓練した人でなければ難しいですが、『この曲のこの部分ならこんなフレーズでアドリブできる』と機械学習が提示してくれたらいいですよね」自分の力量やトレンドにあわせたアドリブの提案は、喜ぶ人も多いだろう。さらには作曲のコード進行のサジェスト、楽譜のOCR……と描く未来は多岐にわたる。「音楽という芸術的な分野だからこそ、機械学習が立ち入るスペースもたくさんあります。音楽は身近であるがゆえに、日ごろから優れたものに接する機会が多い。だからこそ、いつも聞いているものと自分のスキルのギャップをどう埋めればいいか見当もつかないことも多いと思います。このギャップを技術で埋められたらいいですよね」
機械学習に関しては金氏をはじめとする機械学習エンジニアと連携して進めることになる。「私は、機械学習は専門外ですが、音楽を知っているからこその視点や価値を提供できると思っています」野田氏は語る。「エンジニアは突き抜けた技術を持っていることも重要ですが、これからは基本的な技術にプラスアルファで人生経験や趣味を掛け合わせられることが、大切になると思います。私にとってはそれが音楽だった、ということですね」楽譜、そして音楽の尽きないアイデアを楽しそうに話す野田氏の印象が強く残った。

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野田 / 執筆記事

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“Inspiart”プロジェクトを推進する
プロジェクトメンバーのご紹介

cso
CSO

九頭龍 雄一郎

国内大手楽器メーカーからシリコンバレーの音楽系ベンチャーへ、さらに帰国後介護関連デバイスを開発するベンチャーに参加。

2018年EYS-STYLEの取締役CSO / Inspiart事業本部長就任。同時期に株式会社クレイテックを起業し、製品企画からハ ードウェア/ソフトウェア開発、生産まで全プロセスを手がけてきた経験を強みに、新規事業開発などのコンサルティングを おこなう。

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大塚 健司
CTO

大塚 健司

京都大学理学部卒、SIerにおけるシステム開発を経て2013年EYS-STYLE入社。

その後、株式会社ぐるなびなどを経て、2016年にEYS-STYLEのCTOに就任。Web開発、Android Phone/Wearの開発、機械学習など幅広い分野の開発経験を持つ。現在は、EYS STYLEのInspiartプロジェクトにおいてブロックチェーン開発及びEYS-STYLEモンゴルオフィスのマネジメント業務を担当する。

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金 賢
R&D エンジニア

金 賢

早稲田大学基幹理工学部応用数理学科卒業、シンガポール国立大学大学院理学研究科数学専攻修了(修士)。

卒業後シンガポールで自動運転自動車の時系列データ解析、センサーフュージョン、センサー外れ値検知、物体検出などのモジュールを開発。日本に戻り、音声認識、異常音検知などのプロジェクトに従事。現在は楽曲の自動作成、音源調整技術を開発中。

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張 森
R&D エンジニア

張 森

千葉大学の飛び入学制度を利用し、17歳で入学。
3年で大学を卒業し、総合研究大学院大学で素粒子物理学の博士号を取得。

岡山光科学研究所に勤務し、研究を進める傍らITに興味を持つ。SIer、機械学習関連のベンチャー企業を経て、現在はEYS-STYLE Inspiartプロジェクトにて、機械学習による楽曲ミキシングなどの研究開発を担当する。

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ハダノウィチ アレクセイ
R&D エンジニア

ハダノウィチ アレクセイ

ベラルーシ出身。東京都市大学卒業後、同大学院にてEnd-to-End音声認識システムの研究・開発を行う。

同時にEYS-STYLE Inspiartプロジェクトに参画し、機械学習によるノイズ除去に関する開発を担当。

Convolutional LSTMなどのニューラルネットワークアーキテクチャの研究を専門とする。

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野田 誠人
CTO

野田 誠人

大阪大学理学部数学科中退。SES企業に入社し、C#を中心としたシステム開発を手がける。その後、かつてバンドに参加していた縁からEYS-STYLEに転職し、ほぼ唯一のエンジニアとして基幹システムを構築。結婚を機に京都へ生活圏を移し、フリーランスを経て塾・教育業界向けシステムを受託開発する企業に転職。講座や出欠管理から動画配信、LINE連携までさまざまなサービスを開発した。2019年4月、Inspiart事業に参加すべく再びEYSに入社。

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