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CTO

大塚 健司 Kenji Otsuka

京都大学理学部卒、SIerにおけるシステム開発を経て2013年EYS-STYLE(現2nd Community)入社。

その後、株式会社ぐるなびなどを経て、2016年にEYS-STYLE(現2nd Community)のCTOに就任。Web開発、Android Phone/Wearの開発、機械学習など幅広い分野の開発経験を持つ。現在は、EYS STYLEのInspiartプロジェクトにおいてブロックチェーン開発及びEYS-STYLE(現2nd Community)モンゴルオフィスのマネジメント業務を担当する。

最新技術を追い続けるエンジニアが目指す
ブロックチェーンによる「楽曲の証券化」とは
いったい何なのか?

Inspiartプロジェクトにおいて機械学習とあわせて中核を担っている技術がブロックチェーンだ。楽曲管理にブロックチェーンを活用するというと著作権管理のことかと思うが、そうではないという。EYS-STYLE(現2nd Community / 以下、EYS)が目指すのは「楽曲の証券化」。この開発の中心となったEYSの取締役CTOでもある大塚 健司氏だ。
「ブロックチェーンの基本的な開発は1週間くらいでできましたよ」とサラリと語る大塚氏に、彼らが目指す理想について聞いた。

Kenji Otsuka

だれもが気軽に音楽に関われる社会を

仮想通貨ばかりが注目されがちなブロックチェーンだが、その本質は決してそこにはない。分散型でデータ(台帳)を管理するという仕組み自体が大きな可能性を秘めている。その可能性とひとつとして一般的には“著作権”の管理がよく挙げられるが、Inspiartでは音楽業界でしばしば問題となる“レコード原盤権”(※)の管理を目指すという。「このレコード原盤権をブロックチェーンで分割して流通させることで、ミュージシャンが資金を集める場にできないかと考えました。それが『楽曲の証券化』です」と大塚氏は語る。つまり、楽曲の権利を証券のように複数人で購入、売買することで、ミュージシャンに投資できる仕組みだ。「ミュージシャンも人気が出てくると、昔作った楽曲の価値も上がりますよね。でも最初はある程度資金のある人や企業から出資してもらって作るしかありません。それでは一定以上の資産家しかその市場に参加できないし、資産家と出会えるミュージシャンも限られます。ブロックチェーンを使うことで、一般の人でも少額から出資できるようにしたいというのが『楽曲の証券化』というアイデアでした」こういったプラットフォームが公開されれば、ミュージシャンが活動資金を集めることも容易になるはずだ。
もう少し具体的な例を出そう。たとえば1つの楽曲があり、ある人がその50%分を支払い、権利を取得する。ミュージシャンは支払われたお金をもとに作曲活動ができ、その楽曲にまつわる収益は出資者に半分分配される。さらに、出資した人は自身が持つ権利を市場で売ることもできる。100円で権利を買った楽曲の人気があがり、1000円で売れた、ということも出てくるだろう。まさに証券市場だ。「この仕組みを実現するプラットフォームとしてブロックチェーンが有効だと考えました(大塚氏)」

※ 著作隣接権のひとつ「レコード製作者の権利」として定められているもの。音楽のレコーディングをおこなった(費用を負担した)者が権利を持つ。
Kenji Otsuka

ブロックチェーンにこだわる理由

ブロックチェーンにこだわる背景には、楽曲の権利を取り巻く問題点がある。残念なことだが、現状、音楽に関する権利や収益分配の状況は完全にオープンとは言い切れない。「楽曲の証券化を考えたとき、EYSが中央集権的に管理することもシステム的にはできるでしょう。しかし『どれだけ明示的に管理するか』となるとブロックチェーンでの管理がベストと考えました」と大塚氏は話す。「当然ですが、ブロックチェーンでなんでもできるわけではありません。ただ、あとから書き換えられないデータの集合体である、というメリットは圧倒的に大きいと思います」
一方で、開発時にネックとなったのがコストだった。Inspiartではイーサリアムのブロックチェーンを利用しているが、ファイル登録のたびにサイズなどに応じて手数料がかかるため、サイズの大きい音楽データを登録すると毎回かなりのコストがかかってしまう。そこで複数の楽曲データをハッシュ化し、ブロックチェーンに保存する手法を採用。「これによりファイルサイズや保存の回数を劇的に減らし、コストを現実的なラインに抑えながら、元のファイルが検証可能な仕組みを実現できました」と大塚氏は語る。

Kenji Otsuka

ブロックチェーンの基本部分は1週間で開発

大塚氏は何事もないように語るが、これはほかではあまり見られない先進的なブロックチェーンの活用法だ。苦労はなかったのだろうか。「ブロックチェーンでこういうことができないか、ということ自体は社長の吉岡のアイデアで、その実装方法を考えるのが私の担当です。音楽教室事業の仕事をしながらだったので、調査には3~4ヶ月ほどかかりましたが、目途がついてからは早かったですよ。開発も8割程度は私自身で担当し、1週間くらいでできました」すでに技術情報がWebや書籍で公開されているから………と大塚氏は話すが、それでも圧倒的なスピード感だ。さらにその後の詳細な開発はモンゴルオフィスで進めたが、それを含めても1ヶ月程度だという。すでにブロックチェーン部分の実装は終わっており、あとは楽曲が登録されるのを待つばかりだ。
「モンゴルオフィスにいるのは大学で情報処理を学び、モンゴル中で1位2位を争うようなエンジニアばかり。ちょうどまだ現地の就労事情が悪く、日本の大手企業が採用に乗り出す前のタイミングで、優秀なエンジニアを採用できました」と大塚氏は話すが、まさにこれが先見の明ということだろう。このようなチームを擁していることは、Inspiartにとって大きな価値になっている。

Kenji Otsuka

金融業界からエンジニアへの転向も「違和感はなかった」

モンゴルオフィスをマネジメントし、トップクラスのエンジニアを率いる大塚氏だが、社会人としてはファイナンシャル・プランナーからスタートしたという異色の経歴を持つ。「大学時代は数学を専攻しており、就職時には金融かエンジニアのどちらかと思っていたので、最初は金融を選びました。その後リーマンショックなどがあったのでエンジニアに切り替えただけで、個人的には自然な流れでした(大塚氏)」実はEYSのWebサーバやメールサーバ、会員システムなど初期のシステム基盤をひと通りそろえたのも大塚氏である。その後、より大きなプログラムに関わりたいとEYSを離れ、大規模なWebサービスを展開する企業へ転職。実際に、大規模プロジェクトの設計・開発からAndroidのウェアラブル端末「Wear」アプリ、iPhoneアプリ開発まで手がけることになる。さらに言語学習アプリ・サービスを展開するベンチャー企業へと挑戦の場を移し、機械学習を取り入れた開発もおこなった。新しい技術を次々にキャッチアップし、自らの強みにしてきた同氏。特にAndroid向けプログラミング言語Kotlinに関しては、専門誌に論文を掲載するほどだ。幅広い知識を身につけるのは大変ではと思ってしまうが、「機械学習も数学的にこうすれば良い、ということをしているにすぎません。基本を理解するだけなら、あまり難しいという感覚はないですね」と大塚氏は話す。

Kenji Otsuka

再度EYSに転職………過去の経験を今に活かす

その大塚氏がEYSに戻ったのが2016年8月のこと。「ちょうど機械学習関連の開発がひと段落した時期に社長の吉岡から誘われました」というが、大塚氏ほどの技術があればさまざまな選択肢があったはずだ。そのなかでEYSに戻ってきたのは、システムの企画や設計から関われることが魅力的だったと話す。機械学習でもなんでも、やりたいテーマをプロジェクトに取り入れることも可能、というワケだ。実際EYSに戻ってよかったことはなにか、と問うと「よかったかどうかは、いつかこの経験を振り返ってわかること。今はまだ判断するタイミングではありません」という答えがかえってきた。逆にこれまで複数の企業で働いたことで、さまざまなタイプのエンジニアと接してきた。この経験が今、EYSの採用活動などで活きているという。いつの日かEYSでの経験がよかったと思うためにも、今は自分の過去や経験をしっかり業務に活かすのみ………日々の積み重ねが後悔のない未来を作り出すのだ。

Kenji Otsuka

世界中で音楽を“分け合う”未来

ブロックチェーンの実装が完了した今、取り組んでいるのはユーザーインターフェース(UI)だ。InspiartのUIはすべて英語ベース。「世界中で演奏したものを組み合わせるというコンセプトなら、英語の方が対象者も広い。UIも海外でユーザテストをしようと考えています(大塚氏)」その後、日本語も含めて多言語化する予定だそうだ。世界中の音楽を分け合う、Inspiartが公開された先にはどんな未来が広がっているのか。興味は尽きない。

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大塚 / 執筆記事

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“Inspiart”プロジェクトを推進する
プロジェクトメンバーのご紹介

cso
CSO

九頭龍 雄一郎

国内大手楽器メーカーからシリコンバレーの音楽系ベンチャーへ、さらに帰国後介護関連デバイスを開発するベンチャーに参加。

2018年EYS-STYLE(現2nd Community)の取締役CSO / Inspiart事業本部長就任。同時期に株式会社クレイテックを起業し、製品企画からハ ードウェア/ソフトウェア開発、生産まで全プロセスを手がけてきた経験を強みに、新規事業開発などのコンサルティングを おこなう。

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大塚 健司
CTO

大塚 健司

京都大学理学部卒、SIerにおけるシステム開発を経て2013年EYS-STYLE(現2nd Community)入社。

その後、株式会社ぐるなびなどを経て、2016年にEYS-STYLEのCTOに就任。Web開発、Android Phone/Wearの開発、機械学習など幅広い分野の開発経験を持つ。現在は、EYS STYLEのInspiartプロジェクトにおいてブロックチェーン開発及びEYS-STYLEモンゴルオフィスのマネジメント業務を担当する。

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金 賢
R&D エンジニア

金 賢

早稲田大学基幹理工学部応用数理学科卒業、シンガポール国立大学大学院理学研究科数学専攻修了(修士)。

卒業後シンガポールで自動運転自動車の時系列データ解析、センサーフュージョン、センサー外れ値検知、物体検出などのモジュールを開発。日本に戻り、音声認識、異常音検知などのプロジェクトに従事。現在は楽曲の自動作成、音源調整技術を開発中。

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張 森
R&D エンジニア

張 森

千葉大学の飛び入学制度を利用し、17歳で入学。
3年で大学を卒業し、総合研究大学院大学で素粒子物理学の博士号を取得。

岡山光科学研究所に勤務し、研究を進める傍らITに興味を持つ。SIer、機械学習関連のベンチャー企業を経て、現在はEYS-STYLE(現2nd Community) Inspiartプロジェクトにて、機械学習による楽曲ミキシングなどの研究開発を担当する。

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ハダノウィチ アレクセイ
R&D エンジニア

ハダノウィチ アレクセイ

ベラルーシ出身。東京都市大学卒業後、同大学院にてEnd-to-End音声認識システムの研究・開発を行う。

同時にEYS-STYLE(現2nd Community) Inspiartプロジェクトに参画し、機械学習によるノイズ除去に関する開発を担当。

Convolutional LSTMなどのニューラルネットワークアーキテクチャの研究を専門とする。

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野田 誠人
CTO

野田 誠人

大阪大学理学部数学科中退。SES企業に入社し、C#を中心としたシステム開発を手がける。その後、かつてバンドに参加していた縁からEYS-STYLE(現2nd Community)に転職し、ほぼ唯一のエンジニアとして基幹システムを構築。結婚を機に京都へ生活圏を移し、フリーランスを経て塾・教育業界向けシステムを受託開発する企業に転職。講座や出欠管理から動画配信、LINE連携までさまざまなサービスを開発した。2019年4月、Inspiart事業に参加すべく再びEYSに入社。

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